嫌オタク流

嫌オタク流
今更ながら読みました。嫌オタク流
いやあ、物言いに引っかかるところもありゃ思わず納得するところもあり、またいくつか笑いのツボに入るところもあってトータルでみれば面白かったですよ。
まず表紙からして嫌みたっぷりな素人の下手絵風な萌え美少女(?)があってその周りを本文から抜き出されたフレーズが無造作に置かれています。しかも白地に赤っていう明らかに日の丸を意識したであろう色遣いが何ともいえない感じを醸し出しています。
たぶんオタクだろうがオタクじゃなかろうが世の中のほとんどの人の読む気を失せさせるであろう表紙を尻目に本をめくってみると「萌えイラストレーション:中原昌也」との表記が!え、あのイラスト、中原昌也が描いたのかよ、すげー。実は一見下手何だがよく見るとポージングとかうまく描けてるんだわこれ。いや、中原氏の絵なんてこれまでみたことなかったからどれほどの腕前なのか知らないし単にどっかから適当にトレースしただけかもしれんけど。とにかく何かちょっと関心。本文読み進めてみるとこれって最近のオタクは下手な奴は最初っから絵を描かないってことに対する憤りから中原氏が率先して下手絵を描いてみせた事が解って彼らの愛に感動……ってことはさすがにないけど文句いうだけではなく実際に絵を描いてみせたという行為はなかなかのものだと。
ところで、この本の帯には『本書を、「オタクこそが優勢種族である」「市場原理によってオタク以外のものを淘汰した、我々の勝利だ!」と無邪気に信じている人々へ捧げる−』とあるんだけど、いるのかそんな奴ってのがまずの感想。でもって仮にそんな奴がいたとしてこの本をてにとって読むとはとても思えない(笑)。んなもんでここで語られるオタク像ってのもかなり偏りがあるんだが、よくよく考えてみると、オレも東浩紀の本とか読んで何か自分まで偉くなった様な気がしてた時期もなかったとはいえなかった様な気がするので、自分が好きなものが持ち上げられるとそれが好きな自分まで偉くなった様な気になるってことはあるかもしれない。なので帯に描かれているような事を本気にしているような人もいないとはいえないか。まあ、中学生の時に洋楽聞いてたり小説読んだりしている俺ってすげぇとか、ドラッグとかに惹かれてる(実際にやってるかどうかは別として)人が全然興味がない人よりちょっと高めの位置からモノをいっているようなもんだと思うけど。
あと、ここがかなり引っかかった所としては海猫沢氏は必死に否定してたんだけど萌え=ポルノっていう解釈。これはちょっと違うと思ったのは、これは個人的な事なのかもしれないけど萌えって言葉のニュアンスとして一番近いのは猫をみてかわいいと思う気持ちだからなんだよね。そういうとお前ら萌えキャラでオナニーしてるんだからそれは違うだろ!とかいわれるかもしれないけど、もちろん萌えは性欲を伴わないピュアな行為だとかいう気はないしオナニーもするけど、そういう性欲ってのはあくまで副次的なものであって萌えの本質ではないと思うのだ。だって個人的に今ジャンプで一番萌えるキャラはネウロの弥子で次が同じくネウロのあかねちゃんなんだがだからといって彼女らをオカズに使おうとかおもわねーもん。特にあかねちゃんなんて髪だぜ!でも可愛いって感情だと思うけど萌えは。まあ、それは萌えを自分勝手に拡大解釈してるだけといわれればそれまでだけど、でも人間より猫が好きな(笑)高橋・中原両氏にこの感情が解らないはずがないだろうと思うと、そこがもどかしい。もっとも、最近はメディアで使われまくったせいで萌え萌えいうのにちょっとした抵抗があるんだけど。萌えってもっとひっそりとしているもんだろ!
最後にもう一度いうけど、この本トータルとしてはほんとに面白かった。中原氏のやる気がなさそうでツボを突くコメントとか海猫沢氏が一人オタクとして奮闘する様とかブラックなコメントとかね。ついでにいうと高橋・中原両氏ともにそこらのオタクよりもよほど濃い人間と見受けられるので結構オタクに対する愛が感じられるのよね、端々のコメントから。いや、単に自分がマゾなだけかも知れんけど。
しかし、想定してる読者層ってどういう人達なんだろ、この本?ほんとにオタク嫌いな連中は絶対読まなさそうだし。