二ノ瀬泰徳の「人間失格 壊」読んだ

先月情報を見たときから楽しみにしてたのだけど、凄いねこれ。
太宰治の「人間失格」を元に独自の解釈を加えて漫画化した本作は、とてつもなくおぞましい代物となっていた。この「人間失格 壊」からは原作*1への敬意なんていう生易しいものは感じられず、それよりももっと深い共感というか絶望が感じ取られた。葉蔵の道化っぷりがこれでもかというほど痛々しく描写され、読む者に得体の知れない居心地の悪さを覚えさせる。作者の決して洗練されているとは言い難い絵*2が、かえって暗い情念のようなものを感じさせられてより強固な印象を持たせていた。読んでてこっちが深淵に引きずり込まれそうになったほど凄まじかったのだ。
竹一がツインテールの女の子になっていたのは笑ったしちょっとびっくりもしたけど、この漫画から本気で「人間失格」を描いて本気で壊そうという強い意志が感じられてちょっと感動した。人によっていろいろ思うところはあるだろうけど、少なくとも自分はこの二ノ瀬泰徳の「人間失格 壊」、凄まじく魂が揺さぶられる傑作だと思う。

しかし、秋田の赤い核実験場はほんと恐ろしいなあ。こんな漫画が載ってる同じ紙面におっぱいとかマンとかいう言葉が踊ってたりするんだから。だが、それがいい。あとひふみがクライマックス直前の実に王道な展開やってて非常に面白いです。最後の一手にこう来るのはベタといえばベタかもしれないけど実に燃える。

*1:正確には原案だけどあえて原作といいたい

*2:でも好きだよ