ガンソード ~夢見る頃をすぎても~ (角川スニーカー文庫)

角川スニーカー文庫から出た、倉田英之氏による小説版ガンソード
ウェンディ、カルメンそしてヴァンの本編前のエピソードが書かれた外伝的な話が収録されている。
ウェンディの話は、兄ミハエルとエヴァーグリーンの街で暮らしていた頃の話。叔父が亡くなるまで、叔父と兄妹だけで暮らしていたこととか、ミハエルが幼い頃から聡明だったことが描かれていて興味深い。叔父が亡くなってからは街の人たちとも交流するようになり、受け居られていくというのが大筋と言ったところ。
気になるのはウェンディの兄への依存っぷりとミハエルの妹への溺愛っぷり。
まあ兄妹二人だけで生きて行かなきゃならんかった訳だからそれは必然でもあるのだがそれにしてもなかなかのもの。ウェンディはまだ幼かったからともかく、ミハエルの妹がすべてってところはぎりぎり兄妹愛の範囲に収まっているかなーって感じだった。それでも相当危なく感じられたが。
そのミハエルも、段々と妹のことだけではなく世間にも目を向けざるを得なくなり(まあ、それだって妹を守るためだが)、またウェンディにもいろいろ出会いがあったりして二人の関係の終わりを暗示させていくのだが、その関係が唐突に終わるのは本編を見ての通り。
たぶん、二人にとってはこのエピソードの頃が一番幸せだったのだろう。このまま幸せが続けばいいとさえ読んでるときちょっと思った。だが、それでは本編に続かない訳で、あらかじめ終わりが決められているだけにちょっと切ない。
個人的には町長の息子で悪ガキのルーベンスが、ミハエルにちょっかいを出して、いろいろあって和解、二人は友達って王道を行ってて良かった。彼の存在と出来事がミハエルをちょっと変えた訳だし。
カルメンの話は田舎から出てきて、駆け出し情報屋になるまでの話。父親の弟子という男、オーシャンを師匠としたのだが、このオーシャンが喰えない男でなかなかにスリリング。カルメンさんが…という衝撃的といえるようないえない様な、むしろ彼女なら当然かってな事実も明かされていてってな感じ。

で、最後はヴァンの話。ヴァンがエヴァーグリーンの街に着く直前の出来事が書かれた話
。ほぼヴァンの視点で語られているのでへーヴァンってこんな事考えていたんだって驚くこと請け合い。ていうか「平成天才ガンソードさん」ってなタイトルな時点でまじめな話を期待するわけないだろというお話。
前二つの話はちゃんと外伝してたのに、この話は、あとがきで真夏の夜の夢とでも思ってくださいといったようにぶっ飛んでる。モチーフはタイトルからもわかるように天才バカボンバカボンのパパならぬバーボンパパなんてのが出てくる。驚くべき事にこのバーボンパパ、こんなネタみたいなキャラなのに、結構強い。何か、ヴァンの行動を計算してよけてるし。しかも自分の信念貫いてて一瞬格好いいとか思ってしまった……。
まあ、全体的に馬鹿な話なのだが。
一言でいうと、ヴァンは童貞オブジイヤーです。そんな話。