青い文学シリーズ 走れメロス(後編)の感想

高田よ、走れメロスのように

ろんりーうぇーいって思わず言いそうになった「走れメロス」。終盤はほんとに高田と城島の物語で、「走れメロス」のアニメ化というよりは完全に「走れメロス」を元にした二次創作という風になっていました。

けど、これが面白いのなんの。特に、この物語における高田の配置が素晴らしい。
高田は最初、メロスにおける「待つ人」であるセリヌンティウスであり、「裏切られた」つまり人を信用することの出来なくなった暴君ディオニスでもあった。高田は、メロスが一度だけ心が折れそうになった場面で、メロスは友のため精一杯走ったという吐露に、竜宮レナばりに「嘘だっ!」と叫ぶほど激昂しそれ以上書くことが出来なくなってしまったのだ。
そんな時、城島の幻が現れて、原稿を読み続きはできたのかと高田に語りかけ、現実にも高田の元に城島の妻からの手紙が送られてきた。その手紙に書かれていたのは、城島が心の臓の病に冒され余命幾ばくもなく、死ぬ前に一目高田に会いたいというものであった。
その手紙を読んだ高田は、すぐさま城島の元に駆けだした。その場面は、メロスが一度は諦めかけていた心をもう一度奮起してセリヌンティウスの元へ走る場面に重なる。という風に、ここで高田はセリヌンティウス・ディオニスからメロスへとその属性を変化させちゃう訳です。つまり高田一人で「走れメロス」に置ける「友を信じて待つ」「裏切られ人を信ずることが出来ない」「信じている友の為に走る」という三要素を体現しているのですよ。
最後、高田は友の元に走ったお陰で友に対する信頼を取り戻し、「走れメロス」の原稿は完成されます。高田を通してメロスの物語が紡がれたため、友に対する信頼の尊さがより浮き彫りになっているような気がします。

で、それを支えるのがハイクオリティな作画や演出。メロスが悪漢をぶちのめすシーンでいつの間にか舞台から原稿を書く高田の机に移ってたりとか、わき水をすするメロスの演技とか、アニメ的な見所も盛りだくさんで、ほんとすげぇよこれって感じです。

あと、舞台の語り部のお姉さんの乳首が立ってたように見えたのがもの凄く気になりました(笑)。