影姫 飯野文彦 角川ホラー文庫

影姫 (角川ホラー文庫)

影姫 (角川ホラー文庫)

つい表紙と帯の異彩が放つ、エロティック・ホラー!の煽りにつられてしまった本。

角川ホラー文庫なのに表紙はこうたろ氏によるイラストで何でだろうという気もするけど、この内容を角川スニーカー文庫で出すわけにはいかないのでまあそういうことなんだろう。そういや最近一般文庫の表紙にアニメ調っていうかそういう感じのイラスト付けてる小説結構見かけるなあ。

物語はというと、地方都市のとある大学に入学した真太郎がひょんなことから男女混合で友達同士の一泊旅行へ行くことになったら友人の一人(といってもそれほど親しくない)が不可解な死をとげ、それから少しすると清純だった子が急に真太郎に迫ってくることになって……、という感じ。話が進むと、この土地に伝わる影女という実体を持たない女妖怪の存在が大学の民俗学の先生を通じて語られて、その彼女はその影女に取り憑かれているのでは、という風に和風ホラーテイストが現れてます。ただ、その和風ホラーテイストも実は……と、その結末というか正体については、結構そうきたか!という感じでした。

純粋にホラーとして読むと、清純だった子が豹変する過程については先に描写をされていたり(この時点で正体は明かされないけど読者にはだいたいの目的が分かってしまう)、主人公格の一人である真太郎が、女とやることしか考えておらず女性をセックスの対象としか見てない癖に童貞で、しかも独占欲が強い上に高校時代は母親に抜いてもらっていたというどこから感情移入すればいいんだっていうくらいの人物だったりするため(ただし、この真太郎、周りからは優等生で真面目と見られている)、あまり感情移入とか出来なかったりするので、それほど怖くはない。別に真太郎が殺されても悲しくないし。もう一人の主人公格とも言える孝一は、真太郎とは対照的なプレイボーイで何人もの女と遊んできたが、今の彼女と出会って純愛に目覚めたというキャラで、感情移入はし辛いけど真太郎よりはマシだったりします。まあ、それでも肉欲におぼれてしまう訳ですが。
それと、「浮気したら殺される」と言うのを早い段階で明かしているのがそれほど怖くないと思った理由なのかも。浮気したり誰彼ともなくセックスする方が悪いとかそういう意味で同情出来なかったりってね。

じゃ、この小説がつまんなかったかというとそうではなくて、ぶっちゃけるとエロかったです。いやあ、エロティックな部分はほんと良かったと思いますです。特に終盤、チャペルでの女の子同士の絡みはなかなかのものだったかと。
なので表紙にびびっとキタ人は読んで損はないかと思います、いやほんとに。

個人的には、粗はあるけど結構満足出来ました。