青い文学シリーズ「走れメロス」が面白かった

現在、日本テレビで土曜深夜に青い文学シリーズという、文学作品をオムニバスでアニメ化している番組を放送しているのですが、それの『走れメロス』の回(前編)が面白かったなあ、と。


このシリーズ、ちょっと前からやってる文学作品にジャンプ等で描いてる漫画家にカバーを描かせて売るっていう集英社文庫の企画が元になっていて、キャラクター原案はその企画にだいたい準じていて、『人間失格』なら小畑健のキャラ、という風になっている訳です。


で、この『走れメロス』はテニスの王子様許斐剛のキャラでのアニメ化なのですが、一体あの許斐先生のキャラでどんなものが出てくるのかとドキドキしながら観ていたら、変則的かつ真っ当なものに仕上がってて観ていて楽しかったのですよ。


この『走れメロス』、一応キャスト上ではメロスが主人公という扱いですが、実質の主人公は、オリジナルキャラの戯作者、高田です。この高田が「走れメロス」の戯曲化を依頼され脚本を書く中、学生時代の友人、城島に裏切られた経験と「走れメロス」の物語が絡み合うという構成になってます。なので、「走れメロス」本編は劇中の舞台劇という演出というかなり思い切ったことをしてきたなあという印象を受けました。まあ、思い切り度で言えば、一応流れは原作を踏襲しつつもギャグ満載のおろしたてミュージカルにした『桜の森の満開の下』とか、原作にないKの視点とか最初からこれっぽっちも先生とKが仲良さそうに見えない『こころ』も大概なんですが。


この高田と城島を中心に据えた今回の話が、一個のアニメとして観ていて引き込まれちゃった訳です。学生時代の城島は役者として才能に溢れ、高田にとっての光の様な存在だったのだが、城島の家は地元の古着商で役者になることを反対される。城島も高田のことを高く評価しており、しばらくして高田の投稿作が文芸雑誌に掲載されます。そこで城島は高田と一緒に東京へ行って舞台をやろうと誘うのですが、結局約束の時間に城島は現れず、高田は裏切られ一人東京に行くこととなった。その裏切りがあったため、友との約束を果たす為にメロスが走る「走れメロス」の脚本を書くことに悩む、という『走れメロス』のアニメ化としては変則的なんだがキャラやら物語やら演出やらはしっかりしていて、しかも原作のテーマには踏み込んだ真っ当なアニメで、ほんと制作者に感服致しました。ちなみに劇中の「走れメロス」の舞台劇に関しては、何故かメロスが王様と大立ち回りを演じていたりするものの(しかもそのシーン、やたら作画が凝っていて格好いい!)、概ね原作通りだったんじゃないかと。


まあ、キャラ原案の所為なのか妙にBL風味なシーンも散見されたけど、どこかの生徒会でも『走れメロス』はBLって言ってたから問題なしだ(笑)。


やっぱりこれだけ知られた文学作品の場合、普通に原作に忠実に作るより制作者毎に大胆なアレンジとかした方が面白いよね、というお話でした。